石積みの良い例・悪い例。

  • 2013.04.22 Monday
  • 20:06
 昨日ある方のコメントで、今回の私の施工したコンクリート等の接着剤的なものを使わないで、私の石積みは壊れてしまわないのか?という質問がありました。

色々と思うところもあり、コメントは非公開にいたしましたが・・・・。

今日の仕事は早くに終わったので、今回の質問にお応えするべく、近所の県立公園へ向かい比較となる写真を撮ってきましたので、石積みの工法や注意点などをご説明させていただこうと思う。

コメントを寄せてくださった方は、接着剤等(コンクリート)で固定しない石積みは崩壊の危険性は無いのかということでした。

確かに今回選択した"空積み”という石積みの工法は素人の方から見れば、非常に不安要素もあるように思える構造だと思います。

しかし、戦国時代や江戸時代に築かれた石積み、はたまた石積みの集落などもコンクリートは使っていないにも拘らず、何百年もの間崩れていませんよね?

それは何故なのか?そして、コンクリートを過信した施工を行うことで生じる石積みの危険性などについても、写真を掲載しながら同時に語っていこうと思う。

石積みに於いてもっとも重要なことは、土の圧力(土圧)に対する抵抗値と”排水”が大切である事を述べておきましょう。

土圧に対する件では、石積みを行う場所が盛土(元々は土が無かった場所に土を埋め戻すこと、または新たに土を石積みの裏に盛っていくこと)なのか、切り土・地山(元々が昔からの自然に出来た法面や、山を切り取って硬い土の層をあらわにした場所なのか?そういった施工条件の見極めも非常に重要になります。

盛土の場合には土が定着(崩れることの無い状態)するまでに時間がかかり、土自体に流動性があります。しかし、この盛土も10年以上経過すると、”地山”となるようです。

ですから、盛土の面積や体積が多い場合、または斜面の勾配や施工の高さが高い場合には空積み工法は非常に気をつけて施工する必要性が出てきます。

逆に地山だったところに石積みを行う場合には、高さが1m以下であればさほど問題は無いと思います。

しかし!!!しかしですよ、ここからが大切なところです!!

石積みの”本質”を知らない者や、石積み経験の少ない未熟な技術者は決して今回のような”空積み”は高さがある場合には決して施工しないで下さい!!

石積みというのは、一歩間違えれば大事故に繋がる恐れのある工事だからです。

日々修練を積み、土の形状を見極め、石積みの禁忌を知る人だけがこの"空積み”を施工する事をお勧めします。

そして、今から色々な写真を使って、石積みの施工について考えていこうと思う。

先のコメントで、接着剤的なものを使わないで大丈夫ですか?という質問ですが、その質問は石積みの”本質”からは少しずれてしまいます。

それは、コンクリートを使えば丈夫な石積みが出来るということでは全く無いからです!!

先ずはこの写真を見ていただきましょう。

ishitumi_18.jpg

私の近所の県立公園に作られた石垣です。公共の公園施設に作られたコンクリートを使った石垣です。

素人目には遠めで一見すると、重厚で素晴らしく見えるかもしれません。

ですが、プロの私から見ると採点は0点です。そう、1点の価値もありません。

俺は何様だと言われそうですが、それは順に説明していきます。

ここの石積みはコンクリートの利便性に頼りすぎ、職人としての技術や心を持ち得なかったプロ(私はこういう施工をする人間をプロとは言いたくありません)が施工した結果です。

遠目には綺麗に積まれていますが・・・近くで見てみましょうね!

ishitumi_19.jpg

これがアップで見たこの石積みの写真です。

石と石とが噛みあっても無く、面積の広い石の面を表にした結果、本来もっとも重要な”控”という後ろ側に石の長辺を取らなければいけない筈が、不安定にセメントの接着力だけに頼って施工されています。

これは最早、”整層積”でも”落とし積み”でも”乱積み”でも何でもありません!!

石積みでは無いのです。コンクリートで固めた石のテクスチャーのみを見せる、”張りぼて”です。

しかも、この石積みの”本質”を無視したために、非常に危険な施工になっています。

コンクリートの接着力を過信して施工した為に、多くの石が剥がれ落ち、公園という公共の場所にありながら、石が剥がれ落ちているのです!!!今日、私が少し触っただけで3つの石が簡単に剥がれ落ちました・・・・・。

一重に、ここを施工した職人さん、そして、統括したゼネコン等の現場技術者、そしてそれを管理する国や県、市の職員が物事を知らな過ぎ、適正単価を圧縮するからこうなったのです。

いや、”モノ作りの本質”を忘れてもまかり通る世の中が、こうした施工を”国民の血の税金”を使ってまでも許されてしまうのだろう。

ishitumi_20.jpg

別の写真ではどうでしょうか?石と石とが噛みあっていないのでコンクリートが隙間から流出してしまい、景観を汚すだけならまだしも、こうしてみると、コンクリートI只単にめり込ませている様な石材の有様です。

ishitumi_21.jpg

別の写真もしかりです。

そう、コンクリートを使う施工が悪いとは私は絶対に言いません!!正しく石積みをした上でコンクリートを使えば、それはとても強度を増し、そして人々に安全を提供することが出来る側面を持つからです。

しかし、今回私が施工した"空積み”であれ、コンクリートを使った石積みであれ、「石を積み上げるとはどういうことなのか!」の"本質”を知らない業者は最早、石積みに関わらず”ものつくり”をしないで頂きたい!!

コンクリートを使えば確かにある程度の石の噛みあわせを補って貰えるし、施工スピードも上がるでしょう、でも”石積み”とはそういうものではないし、コンクリートだからこそ、先に述べたように”排水”の付いても考慮しなければならないし、コンクリートの特性に熟知しなければ活けないし、膨張・収縮をするコンクリでは”縁切り”という事を行わなければならない。

建設業の方なら知っていますが、”エラスタイト・スメタイト”などの伸縮目自在を入れ無ければならない。

私も元々は神奈川県では大手の造園会社で元請の現場監督を3年間していた。だからコンクリートの性質やコンクリート石積みや公園工事で2億円を越える工事も何件も経験している。

今現在は庭師の親方として、その当時の経験も非常に活かされている。

さて、今までの記事を読んでいただいて分るとおりに、石積みに必要なのは決して、”接着剤なるもの”ではなく、あくまでも自然石を積むという上での”本質とそれに伴う技術”が必要ということです。

今回の石積みに関しては、地山ということもあり、そして大きな土圧は施工した場所の下のコンクリート製品による擁壁がそれを支えてくれています。

合わせて、石を積み込む、勾配傾斜、石と石との噛みあわせや、石積み工法の”整層積み”などを選定し、石の裏込めにグリ石や砕石を入れることで、雨水による排水を促し、水圧を逃がし石材の自重を持って石積みを強固にし、石と石との接点を表面ではなく、石と石との側面の少し奥で噛みあわし、摩擦抵抗を大きくし崩落の危険性を回避したのです。

ishitumi_16.jpg

これが私の今回積んだ石積みです。先に紹介した石積みとはちゃんと見れば違いが分ると思います。

ishitumi_17.jpg

空積みだからこそ、石積みの本質や施工法のあり方に慎重になり、一石一石に注意し、安全を考慮し、積み上げるのです。

ishitumi_22.jpg

そして、同じ公園での”崩れ積み”これは”空積み”でしたが、ですがやはりこの石積みも0点です。

残念なことに、この石積みも石と石とのかみ合わせも悪く、石が不安定な状態です。

私達の税金を使って作られたものが、このようにいい加減な施工業者に施工されてしまうのも、今現在の悲しい現実です。

私が“良い施工者”と言うのではありません!!私はあくまでも普通の”職人”なんです!!

ただ、利便性や大手からの安価な施工金額に合わせた施工や、本質に迫ることすら忘れた”職人もどき”が増え、本当の職人が日の目を見ない現在はやはり、おかしな社会だと思う。

空積みは”危険”というのは違うのです!!

本当の本質を追うことも無い職人が作った”空積みや石積み”、コンクリート等の利便性のみに走り、未熟な施工業者が作る”石積みや空積み”が倒壊の恐れがあり、危険なのです!!





この写真は私がコンクリートを裏に使った作品。通称”城積み”です。


5年前に北海道の日本庭園協会主催の”伝統庭園技塾”で研修施工した高さ5m以上の”空積みの城積み”です。こんなに巨大な石積みも崩れることはありません。石材も赤ボサ石でした。大きなもので幅1.5mもある石を使っています。


これも2年半前に”本小松石”で積んだコンクリート裏込めの石積みです。

ida_03.jpg

昨年の夏に出かけた、長野県飯田市近郊のお寺内の玉石積み。これ素晴らしい出来です!

kataseyama_28.jpg

これもコンクリートを使った石積みです。

そう、コンクリートは便利な道具で素晴らしいと思う。でもそれに頼りすぎた施工は、安易な施工になる危険性があるのです。皆さんに分っていただけたら嬉しいです。

今夜はそんな”石積みに於けるコンクリートの利便性に潜む危険性と、良い石積み・悪い石積み!に付いて書き綴ってみました。



コメント
はじめまして。建築設計をしているものです。どの業界も同じだな〜。と感じつつブログ読ませていただきました。便利なアイテムが増えることでどんどん仕事をこなせる人間になる敷居が低くなる。でも、それは単に仕事をこなせるようになっただけで、プロになった訳ではない。残念ながら、この国からどんどんプロがいなくなり、単なる便利なアイテムやツールのオペレーターばかりが増えている現実を憂いています。や 私の職種で言えば、建築設計という職能が既製建材をカタログから品番を選ぶ。いわば主婦のカタログショッピング紛いになる日がくるのではないかと思っています。前置きが長くなってしまい申し訳ありませんが、現在設計している建物で、外壁を石積みにしたいと考えております。壁ですので、擁壁のように裏込材がありません。石積みの壁が自立しているものです。建築確認申請における構造計算の問題もありますが、それ以前に色々な資料を見ても施工方法すら見つからず困っております。
イメージとしましては面空積みのようなものを考えております。平屋で10平米程度の小さな離れで壁の高さは1.5m程度なのですが、施工は可能でしょうか?お知恵を拝借頂けましたら幸いですです。
  • コンコルド
  • 2017/11/29 2:31 AM
初めまして、あーしーさん。日夜苦悩しながらも、自分の志をもって精進されているのですね!
そのお心が一番大切だと思います!
きっと、いつか花開くときが来ると信じて共に頑張っていきましょう!!

私はそんな、あーしーさんのお力になれることは少ないと思いますが、自分なりのこだわりを持って、これからも精進していきたいと思います!!コメントありがとうございました。
  • 霧島宏海
  • 2013/05/10 9:41 PM
霧島さんはじめまして。
いくつか記事を読ませて頂いていたのですが
失礼ですが親方と呼びたい位の僕好みの考え方です。(笑)
石積み素晴らしいです。手間をかけても妥協をしない職人のスタイル憧れます。

自分は鳶で外構で今は左官をやっています。10年目の27歳です。
一年程前に、壁を覚えたく今の親方のところにきたのですが、最近少し転職を考えています。
もちろんこの世界、不満なんてものはいくらでも探せばあるものだと思っています。
が、どうしても我慢できないのが、毎日名前ではなく、
オイあれやれや とか アレにやらせればいいわ
とか 人間の事をオイだアレだなんて呼び方をしてくる事に我慢が出来ないです。
毎日それにイライラして、壁を塗る時は一言も文句など言いませんが、外構仕事などになると生意気にも間違った親方のやり方よりも自分のやり方を通すまでになってきてしまいました。
お寺などにも入らせてもらうような親方なのでついて行きたいのですが…うまくいきません。。
  • あーしー
  • 2013/05/08 7:39 PM
すばらしい石の技術拝見させていただきました。
とくに野県飯田市近郊のお寺内の玉石積みは、本当に現代人の仕事に思えないほどすごいです。
玉石がこのようにかみあう事は相当の労力と経験と計算があって
初めてかみ合うと考えます。
魂が入った作品を見ると本当に感動します。百年先も末代までも
残るもの古くなればなるほど美しいもの
まるで戦国時代の城跡の石崖
城は朽ち果てても石崖だけは残る。
もう少し私がわかければ、身一つで何も捨て弟子にしていただきたかったです。
  • nishi
  • 2013/04/26 8:26 PM
こんにちは。この世界から離れてしまうのですね・・・。
とても残念です。指導する私たちは雇われる人達の気持ちもしっかりと理解していく必要性を感じました。

確かに私も伝統的な仕事ばかりではなく、小さな小さな植木屋さんです。

なので、こういった仕事の場合には特に”モノつくりの本質”を紐解き、指導し、決して”職人もどき”にはなって欲しくないのです。

なんとか私も踏ん張って、後輩指導にも妥協しないようにしいきたいです。そうすることの積み重ねがこの業界の底上げに繋がって行くと信じています。
  • 霧島宏海
  • 2013/04/24 6:34 PM
霧島様初めまして。
今回の記事大変、感動いたしました。
霧島様のように、きちんとした経験知識を得た、方に教えていただければ、私も変っていたでしょう。
 霧島さんがおっしゃてる事を今の自分の環境でいくら言っても話は通りません。
 あくまでも私事ですが・・・
今の私の現状は、猿回しの猿です。
ロープに繋がれて、アッチやコッチへと回されてます。
 こんな仕事が嫌で、もうこの業界を去ろうと思います。

 これからも私のような「職人」と呼ばれるような人が増えないように。情報を発信していってください。
 
最後に、いい仕事をしたくても出来ない立場の職人もいると思います。
そういった考えの若い人材を良い方に育てていけたらいいですね。
  • 庭師とは名乗れない者
  • 2013/04/23 8:04 PM
その通りですね。
  • 霧島宏海
  • 2013/04/22 11:12 PM
なんでも設計強度以上のちからが加われば、、、、こんくり-ともしかり、、、半永久的なトンネルや地下鉄でも同じです。
  • 宮崎
  • 2013/04/22 10:26 PM
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